未来:湊かなえ著
徳島繊維卸問屋 ㈱山善の着物の先生てるよ女将こと山口哲代です。
湊かなえさんの未来をよみました。宏子さんがプレゼントしてくれた本です。
そのストーリーと感想をお伝えします。
この物語は、二人の少女が、「ドリームランド」という名のレジャーランドへ向かう夜行バスに乗るところからスタートし、憧れのドリームランドに入場する場面で終わります。
五章のあらすじ
物語は、五章からできています。
章子
この本の半分を占めるのが、「章子」と言う章。
主人公の名前は、佐伯章子(あきこ)。
小学校四年生の終わりに、10歳の章子に30歳の未来の章子から手紙が届きます。
主人公が、その未来の章子に手紙の返信を書いていくという形でストーリーは続いていきます。
小学校時代、中学校時代と多感な時期を、とてもハードな環境で過ごす章子が描かれています。
今でいう、ヤングケアラーだと思います。本人は、当たり前だと思っていて、周りに知られたくない気持ちなんだなぁ。
ほんまに、ハードですね・・・
エピソードⅠ
エピソードⅠは、亜里沙について。
章子と一緒にドリームランドへ向かう女の子です。
スタートの頃は、章子と距離があったのですが、だんだんと仲良くなっていきます。
章子は父を亡くし、亜里沙は母を亡くしています。
そして二歳年上の仲の良い先輩の智恵理ちゃんのエピソードも。
エピソードⅡ
章子と亜里沙の四年生時代の担任の先生篠宮真唯子(まいこ)の話。
彼女も、両親に育てられず、母方の祖母に育てられている。
しかし、祖母が愛情込めて育ててくれたので、救いがあった。
ただ、祖母の死後、実母が遺産相続にやってきたところから運命の歯車が狂ってしまう。
エピソードⅢ
章子の父、佐伯良太の話。
章子の父は章子が四年生の時に癌で死んでしまうのだが、なぜ、章子の母、佐伯文乃と結婚したのか。
母、文乃がどうして精神を病んでしまったのか。
なぜ、故郷を捨てなければならなかったのか。
謎がどんどんと明かされていく。
終章
章子と亜里沙がドリームランドへ向かうバスの中へ話は戻る。
彼女たちの夢の国、憧れの場所、「ドリームランド」
そこへ到着した時、彼女たちが感じることとは?
繰り返される問題
この物語のテーマは、児童虐待と子供の置かれた現実だと思う。
これでもか、というほど、問題がたくさんおこり、考えたくない現実が起きていく。
虐待を起こす大人たちが変わらなければ、この問題は無くならないのだろう。
虐待が落とす影は深く濃く、なかなか癒されることはない。
自殺、殺人、放火。
子供たちをそんな犯罪を起こさせる環境から守ることはできないのか。
そして、コロナ禍の今、子供たちの虐待、貧困の度合いは深まっていることがわかっている。
児童虐待20万件越え
大人たちも生きていくことに精いっぱい…
理不尽のはけ口が子供に向かうこともあるのかもしれない。
でも、それは、違うよね。
もうすぐ始まる新学期。
9月は子供たちの自殺率の最も高い季節になる。
アンテナを張り巡らせて、すこしても子供たちの信号をキャッチしたいと思う。
虐待は心も体も深く傷つける。
湊かなえさんがあとがきに書いていることが忘れられない。
子供たちは7人に一人が貧困状態にあること。
作中の物語は、決してレアケースではないということ。
しかし、この本の題名は「未来」
あらゆるシーンに「ドリームランドに行く」話が出てくるのが印象に残る。
ドリームランドに行く=幸せの象徴なのかもしれない。
主人公のような子供たち、取り巻く人たちに、明るい未来を私たちが作っていけると信じて感想を終わりたい。