お母様の形見のきもの
徳島繊維卸問屋 山善のてるよ女将です。
春の展示会の時、お預かりしていたお着物が出来上がりました。
お母様の形見
少し前にお母様を亡くされたお客様。ご自宅の荷物はそのままにされていました。
年齢を重ねて、少し自分に使える時間もできました。
ご自宅の荷物を見てみると、茶色い紬と、赤い絞りの少し切った羽尺、少し切った長襦袢の反物が出てきました。
ご相談を受けて、お客様の寸法に仕上げることにしました。
出来上がりがコチラです。
![紬に羽織、緑の帯](https://i0.wp.com/yamazen-teruyo-okami.com/wp-content/uploads/2018/08/IMG_20180809_145749.jpg?resize=225%2C300)
紬に羽織、緑の帯
グリーンの名古屋帯もお母様の帯です。
長襦袢と帯揚げ帯締め、羽織の紐などを準備すれば、すぐにお出かけできます。
ずいぶん長い間眠っていた着物たちなので、「ゆのし」作業からやり直して仕立てました。
ゆのしの工程
「ゆのし」とは、反物(たんもの)に蒸気をあてて生地を柔らかくし、生地の巾を整えて、生地のしわを伸ばします。縦横の糸の張りも整えておきます。
そのひと手間が、着物の仕上がり具合を美しくしてくれる工程です。
紬には地入れといって、本来別の工程が必要なのですが、
今回の紬はゆのしでOKでした。
赤い絞りの羽尺は絞りのふんわりした生地です。
幅が縮んでいたので、ゆのしは必須でした。
裏地を決める
羽織の裏地には、肩裏と言って薄い柄物の裏地が必要となりますが、
今回は、表地も使いかけで短いので、たくさん裏地が必要となります。
そこで、こちらも使いかけていた長襦袢の生地を当てました。
これなら、ご希望の長さに仕上がります。
また、紬の裏生地は新しい胴裏と紬の八掛けを使用しました。
八掛の色選びも楽しいものです。
着物のお誂えの「だいご味」の一つです。
今回は渋めのローズピンクを選ばれました
そうして出来上がりました。
帯は二本お持ちなので、帯によって全く趣が変わるのがおわかりいただけると思います。
![紬に絞りの羽織、茶色の帯](https://i0.wp.com/yamazen-teruyo-okami.com/wp-content/uploads/2018/08/IMG_20180809_145859.jpg?resize=225%2C300)
紬に絞りの羽織、茶色の帯
ざっくりした紬の着物にふんわりした絞りの羽織。
カジュアルな着物が出来上がりました。
紬の着物は、あくまで街着。
冠婚葬祭などのフォーマルな場には向きませんが、カジュアル着物で今大人気なんです。
同窓会や、街着にはぴったり。お食事にも着てほしいなぁ。
私と同い年のお客様なので着姿の妄想は広がります。
なで肩で着物がよくお似合いになる方です。
裏地のあるお着物なので、10月から5月までの長ーい着用期間が楽しみです。
こうして、眠っていた反物(たんもの)を使ってくれたら、
亡くなられたお母様は、きっとすごく喜んでくださっていると思います。
それを着たいと思うお客様も素敵だなぁ。
着物は財産だと思っています。
お蚕さんの繭からできた絹糸。
それを使ってできた着物や帯は着心地抜群です。
せっかく平和になった日本に生まれてこられたんだもの。
お手持ちの着物や帯をぜひぜひ使ってあげてくださいね。
着たい着物を、着たい時に自分で着られるように。
着物女子全力応援しています。
徳島市問屋町46番地
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