お母様の形見のきもの
徳島繊維卸問屋 山善のてるよ女将です。
春の展示会の時、お預かりしていたお着物が出来上がりました。
お母様の形見
少し前にお母様を亡くされたお客様。ご自宅の荷物はそのままにされていました。
年齢を重ねて、少し自分に使える時間もできました。
ご自宅の荷物を見てみると、茶色い紬と、赤い絞りの少し切った羽尺、少し切った長襦袢の反物が出てきました。
ご相談を受けて、お客様の寸法に仕上げることにしました。
出来上がりがコチラです。
グリーンの名古屋帯もお母様の帯です。
長襦袢と帯揚げ帯締め、羽織の紐などを準備すれば、すぐにお出かけできます。
ずいぶん長い間眠っていた着物たちなので、「ゆのし」作業からやり直して仕立てました。
ゆのしの工程
「ゆのし」とは、反物(たんもの)に蒸気をあてて生地を柔らかくし、生地の巾を整えて、生地のしわを伸ばします。縦横の糸の張りも整えておきます。
そのひと手間が、着物の仕上がり具合を美しくしてくれる工程です。
紬には地入れといって、本来別の工程が必要なのですが、
今回の紬はゆのしでOKでした。
赤い絞りの羽尺は絞りのふんわりした生地です。
幅が縮んでいたので、ゆのしは必須でした。
裏地を決める
羽織の裏地には、肩裏と言って薄い柄物の裏地が必要となりますが、
今回は、表地も使いかけで短いので、たくさん裏地が必要となります。
そこで、こちらも使いかけていた長襦袢の生地を当てました。
これなら、ご希望の長さに仕上がります。
また、紬の裏生地は新しい胴裏と紬の八掛けを使用しました。
八掛の色選びも楽しいものです。
着物のお誂えの「だいご味」の一つです。
今回は渋めのローズピンクを選ばれました
そうして出来上がりました。
帯は二本お持ちなので、帯によって全く趣が変わるのがおわかりいただけると思います。
ざっくりした紬の着物にふんわりした絞りの羽織。
カジュアルな着物が出来上がりました。
紬の着物は、あくまで街着。
冠婚葬祭などのフォーマルな場には向きませんが、カジュアル着物で今大人気なんです。
同窓会や、街着にはぴったり。お食事にも着てほしいなぁ。
私と同い年のお客様なので着姿の妄想は広がります。
なで肩で着物がよくお似合いになる方です。
裏地のあるお着物なので、10月から5月までの長ーい着用期間が楽しみです。
こうして、眠っていた反物(たんもの)を使ってくれたら、
亡くなられたお母様は、きっとすごく喜んでくださっていると思います。
それを着たいと思うお客様も素敵だなぁ。
着物は財産だと思っています。
お蚕さんの繭からできた絹糸。
それを使ってできた着物や帯は着心地抜群です。
せっかく平和になった日本に生まれてこられたんだもの。
お手持ちの着物や帯をぜひぜひ使ってあげてくださいね。
着たい着物を、着たい時に自分で着られるように。
着物女子全力応援しています。
徳島市問屋町46番地
株式会社 山善
088-623-2366