おばあちゃんの羽織を生かす
着物大好きっ子のKちゃん。おばあちゃんから羽織やコートを頂きました。
身長も違うし、着物の寸法も違うし。どうしたものかと、相談にお越しになりました。
袖をほどく
大体そうなんですが、昔のお着物は小さいんです。
そして現代の女性の方が大きい。栄養も環境もちがいますから、しかたないですよね。
そこで、まず引っかかって、先に進めなくなったり、諦めたり。
でも、方法はあるんです。
今回の場合、まずお袖を解いて「ゆのし」に出します。
それは何故かというと、袖の巾を広げて、袖丈を伸ばすためです。
今回の場合は袖丈も短くて、しかも長くできそうだったので、この方法がベストだと判断しました。
袖付けの筋けしをする
袖付けの部分には、強い折がかかっています。そして「へら」の後も残っています。
それをきれいにするために、「筋けし」という工程が必要となります。
袖を付けてから筋けしをする方が、仕立師さんはらくなのですが、筋の消え具合が違ってきます。
お袖を付ける前に筋けしをする方がきれいに消えるのです。
その分仕立ても大変になるのですが、ここは美しさ優先。
きちんと筋を消えるだけ消してもらいました。
袖を付けて肩裄を伸ばす
ここまでが仕立てる前に行うべき工程です。
今回もずいぶん長さを出すので、本来ならばあ「洗い張り」と言って
すべて解いて反物の状態に戻し仕立て直す作業も考えたのですが、
防寒に着る羽織なので、今回は簡易版で進めました。
袖巾いっぱいに袖を作って、身頃も精いっぱい出して羽織を仕上げてもらいました。
袖付けが斜めになってしまうので、すこしだけ、「まち」の部分を下げてもらって仕上げました。
羽織の役目
羽織は室内でも着たままで過ごすことができます。
もちろん、寒い日の防寒にもなるのですが、
脱がなくてもよいので、半巾帯に羽織でも大丈夫。
気楽に着ることができます。
着物の上に羽織るので、袖巾は着物より少し広めになりますが、
袖丈は着物より少しだけ短く作ります。
それは何故か?というと、着物のお袖が外に出るのを防ぐためです。
上に羽織るので長くても良さそうに思うのですが、逆なんですね。
室内で着る羽織は、座ることも考えてあまり長く作りません。
そして、座る場合は、お尻の下に羽織を敷きこまないように注意が必要です。
長羽織もとても素敵ですが、長羽織の場合は、室内に入る場合脱ぐことが多いです。
つまり、コートと同じような役目です。
長い羽織を着たままで立ったり座ったりすると、少し不便かもしれませんし、
羽織も傷みやすいです。
羽織の長さを決める時も、流行りだけじゃなくて、使用目的も考えて作った方がよいようです。
Kちゃん、これで冬のお出かけも大丈夫。
着物ライフが広がりそうです。
着物や帯のご相談承ります。お気軽にお問合せくださいね。